前回のブログでは、歯の治療にどのくらいの日数がかかるか?というお話をしました。
虫歯の治療では、1回で完了するような軽度の場合を除き、削った歯の部分を型取りしてから、その型をもとに歯科技工士が詰め物やかぶせ物などを製作し、削った場所に取り付けます。
この時、最後に歯に取り付ける詰め物やかぶせ物を総称して補綴物(ほてつぶつ)と呼び、保険適用のものから自由診療のものまで、さまざまな素材で作られます。
(保険適用の補綴物というと銀歯を思い浮かべる方も多いと思いますが、2020年の法改正により、白い素材を使った保険適用の範囲が拡大されています)
この補綴物の製作にはおおむね一週間から、素材によってはそれ以上の日数がかかります。
補綴物ができあがるまでの期間、削った歯の部分をそのままにしておくわけにはいかないため、虫歯を削ったあとは「仮詰め(仮ぶた)」を、抜歯後には「仮歯」を装着して、完成を待ちます。
では、この仮歯や仮詰めの段階で治療を中断してしまうと、いったいどうなるでしょうか?
問題1:新しい虫歯になる
仮詰めは、「虫歯で歯を削った後に行うもの」と「歯の神経を取る根管治療の途中に行うもの」の2種類に大別されます。
歯を削ったあとに行う仮詰めは、補綴物が完成するまでの間、冷たいものなどがしみないように保護したり、削った部分の形が変わらないように固定するなどの役割があります。
根管治療は一回で終わることはほとんどないので、その際に行う仮詰めは、次の治療まで外部からの菌にさらされないようにするために、よりしっかりと封印されます。
仮歯には、抜歯後の見た目をよくし、補綴物ができあがるまで削った部分の形が変わらないよう固定し、かみ合わせの違和感を和らげるなどの目的があります。
仮歯は、歯科用プラスチック(レジン)の中でもやわらかい素材でできており、仮着剤(仮着セメント)を使って仮止めされます。
仮詰め・仮歯とも、すぐに取り外すことが前提なので、長期的な耐久性は求められていません。
そのため、しばらく放置すると接着剤が溶けてすき間からプラークが入り込み、新たな虫歯が発生してしまいます。
問題2:それまでの治療が無駄になる
歯のかみ合わせというのは、隣り合った歯や、向かい合った歯の微妙なバランスで成り立っています。
そのため、歯が抜けたままで放置すると、かみ合わせの形もすぐに変わってしまうのです。
仮歯はやわらかい歯科用プラスチックで作られているため、耐久性が低く、使い続けるとすぐにすり減ってしまいます。
すり減った部分に反対側の歯が伸びてきて、かみ合わせの形が変わるため、せっかく型取りをして製作した補綴物が入らなくなったり、取付時に大幅な調整が必要になることがあります。
仮詰め・仮歯はデリケートです。
以上のような理由で、仮詰めや仮歯のまま治療を中断するのはよくありません。
いったん型取りをしたら、できるだけ治療計画どおりに通院するようにしてください。
また、仮詰め・仮歯は取れやすいため、お餅やキャラメル、チューイングガムなど、歯にくっつきやすい食品を噛まないようにします。
デンタルフロスや歯間ブラシ、つまようじの使用は控え、歯ブラシでやさしくブラッシングする程度にしましょう。
金属の詰め物が取れたら
仮詰めでなく、まれに金属の詰め物がポロッと取れる場合もあります。
その原因としては、詰め物を固定しているセメントが劣化する場合と、歯の内側で虫歯が進行している場合があります。
セメントの劣化によって金属が取れたケースでは、すぐに処置することで、取れた金属をそのまま付け直せる場合もあります。
詰めものが取れた部分は、歯の内側の柔らかい象牙質がむきだしで、虫歯になりやすい状態になっています。
この部分が虫歯になってしまうと、取れた金属を取り付けることはできなくなりますので、できるだけ早めに通院されることをお勧めします。
また、外れた金属は変形しやすいため、コインケースなど硬いものと一緒に保管せず、単独でビニール袋などに入れて変形しないようご持参ください。
取れた金属をご自身でアロンアルファで接着したというお話も時々聞きますが、接着面に菌がついたままだと内側から虫歯になるリスクが高くなるので、ご自身では絶対に取り付けないようにしてください。