歯科の治療について、「何日もくり返して通院するもの」といったイメージはないでしょうか。
これは、ある意味では当たっているともいえるし、そうでないともいえます。
今回は、いったん歯科の治療に取りかかった際に「何日通えばいいの?」という疑問に焦点を当ててお話していこうと思います。
なお、以下に取り上げるケースはあくまでも目安です。実際の治療にかかる日数は、治療する部位や症状、患者さんの状態などによって異なりますので、ご参考としてお読みください。
1〜2回の通院で済むケース
まず、ごく初期の虫歯の治療であれば、最短1回の通院で完了させることができます(初期の虫歯であっても、虫歯になった場所や本数、歯の周囲の状況によっては、何回か通院していただくことがあります)。
また、歯科の定期検診も1回の通院で済みます。検診によって問題が見つかったときは、その後の治療内容によって通院日数が変わります。
定期的に歯科検診や歯石の除去をされている方であれば、1回の通院で歯石取りまで済ませることもできます。
歯石についての補足①
何年も歯石除去をしておらず、歯石がびっしりと付いてしまっているような場合は、何回かに分けて歯石を取ります。
歯ぐきの中(歯周ポケットの中)に付いた歯石を除去する際に出血することがありますが、これは歯ぐきが炎症を起こしているためで、放っておくと歯周病の原因になります。
詰めもの・かぶせ物が必要な虫歯の治療
歯の表面は硬いエナメル質で覆われており、その内側に柔らかい象牙質があります。
この象牙質まで達するような虫歯で、削るとエナメル質に穴があいてしまうような場合は、詰めものやかぶせ物を使ってエナメル質の機能を補完してあげることになります。
そのためには、①まず虫歯の部位を削って柔らかい素材で型取りをする、②その型をもとに歯科技工士が詰めもの・かぶせ物を製作し、後日削った部位に取り付ける、という工程になり、最低でも2回の通院が必要になります。
詰めもの・かぶせ物ができあがるまでには約1週間程度かかるので、その間は仮の素材で穴を塞いでおき、詰めもの・かぶせ物が完成するのを待ってから取り付けます。
虫歯になった場所や本数によっては一度にまとめて治療できないため、4〜5回に分けて通院していただくことがあります。
神経まで達した虫歯の場合
虫歯が神経まで達すると、何もしなくても激しくズキズキと痛むようになります。それを放置すると神経が死んでしまうので痛みはなくなりますが、歯の根に膿がたまり、場合によっては外科的手術が必要になる大変危険な状態です。
そのような末期症状まで行かなくても、虫歯菌の出す毒素が神経まで達しているようなケースでは、神経を取る治療が必要になってきます。
虫歯が神経まで達した場合、海外では一般的に抜歯が行われます。
抜歯は最短1回の治療で済みますが、自分の歯はなくなってしまいます。
日本では、神経まで到達した虫歯でも、神経だけを取って自分の歯を残す治療(根管治療)を行います。
根管治療はとても繊細で時間がかかるため、海外では自由治療扱いですが、日本はこの治療を保険適用で行える世界でも珍しい国になっています。
この治療には時間がかかりますが、神経を取り終えるまえに中断すると菌に侵された組織が残り、そこから悪化してしまいますので、根気よく治療を続けてください。
歯周病の治療
歯周病の治療では、まず口の中の歯垢や歯石を取り除き、口内環境を整えて歯周病菌を減らすことを目指します。
生活習慣による影響も大きいので、正しいブラッシングなどのセルフケアの指導も同時に行います。
歯肉の炎症が引いていくことを確認しながら徐々に治療を進めるため、それなりに日数がかかり、週に1度くらいのペースで通院していただく必要があります。
歯石についての補足②
通常、歯石は白っぽい色をしてますが、歯周ポケットの中に真っ黒な歯石ができることがあります。
これは、歯垢と歯ぐきから出た血液が混じって歯石化したもので、歯肉縁下歯石と呼ばれます。
その名前が示すとおり、歯肉のふちの下側にできた歯石なので、外から見ただけでは気づきづらいです。
歯周ポケットの中にこの真っ黒な歯石が付いているということは、歯周病がある程度進行していることを示しています。
黒い歯石は、一般的な白い歯石より固着力が強く、付く場所も歯ぐきの中側なので、1回の治療で数本ずつしか処理できないこともあります。
この黒い歯石を放って置くと、すぐに歯の根の部分が溶けてしまいますから、できるだけ早い時期に治療を開始し、根気よく治療を続ける必要があります。
治療回数を短く済ませるためには
ここまで見てきたように、歯科の治療は短期間で済むもの(定期検診や初期の虫歯)と、ある程度の時間がかかるもの(進行した虫歯や歯周病)に分かれます。
特に、神経まで達した虫歯や黒い歯石がついた歯周病になると、根気よく治療をすすめることが必要になり、治療後も元の健康な状態まで戻るということはありません。
治療時間を短くすませるためには、定期的な検診を受けることが何よりも大切です。治療にかかる日数や費用を節約できるだけでなく、ご自身の健康な歯を維持することにもつながります。
検診を希望される方は、ご予約のうえご来院ください。