昔のファミコン音楽は、ピコピコした音で、どこかレトロな味わいがありますね。
でも表現力という点では、クラッシックやジャズ・ロックなど、実際に人の手で演奏された音楽には敵いません。
音の高低・長短・強弱を上手に組み合わせれば音楽になります。
そこに「穏やかな」「荒々しい」などさまざまなニュアンスが付け足されることで、人を感動させる豊かな表現になるのです。
ここまでは音楽(聴覚)の話ですが、実はお口の中にもさまざまな触覚のニュアンスを感じ取ることができる高精度のセンサーが付いています。
それが歯根膜です。
歯根膜とは
歯根膜は、歯と歯槽骨の間にある薄い膜です。
別名歯周靱帯とも言われており、歯根と歯槽骨を強靱に結び付けています。
歯槽骨というのは、上下の顎の骨の一部で、歯が収まる穴が開いている部分です。
歯はこの穴の中で、歯根膜によってハンモックのようにぶら下がる形で支えられています。
この構造によって、骨にかかる力を分散させているのです。

歯根膜の働き
歯根膜には「歯にかかる力を知るセンサーの働き」「骨にかかる力を逃がすクッションの働き」の2つの働きがあります。
それぞれの働きを見ていきましょう。
センサーの働き
歯根膜の感圧センサーはとても精密です。
わずか0.1mmの髪の毛1本でも感じ取ることができます。
この高性能なセンサーのおかげで、硬いものや柔らかいものを食べるときに、それぞれの食材に合わせて噛む力を上手にコントロールすることができます。
それだけでなく、「サクッとした天ぷら」や「もっちりしたうどん」など、さまざまな食感のニュアンスを感じ取ることで、食生活の楽しさ・豊かさにも一役買っているのです。

クッションの働き
噛む力は個人差が大きいのですが、おおむね自分の体重程度と言われています。
食事のときに歯にかかる力は、女性で40kg程度、男性で60kg程度です。
日常的に歯を食いしばることが多いスポーツ選手などでは、この力が100kg近くになる場合もあります。
これが就寝中の歯ぎしりになると、歯にはなんと300kg 〜 1トンもの力がかかり、歯が割れてしまうこともあるのです。
それに加えて、顎は複雑な運動をするので、歯にかかる力も上下・前後・左右と立体的です。
歯根膜は、さまざまな方向からかかる過剰な力が直接歯槽骨に伝わらないように、クッションの働きをしています。
とても丈夫な歯根膜ですが、ベースとなる歯槽骨が歯周病で溶けてしまうと歯を支えることができなくなってしまいます。
虫歯で神経を取ると感覚はどうなるか?
虫歯が悪化すると、歯の神経(歯髄)を取る治療(根管治療)を行うことになります。
歯の神経を取ると感覚がなくなってしまうのでは? という疑問が生じますが、そんなことはありません。
実は、歯の神経が感じている刺激は痛覚だけなのです。
急激な温度変化に触れた場合でも、歯の神経は「熱い・冷たい」ではなく「痛み」として感じます。
これが知覚過敏で痛みが生じる理由です。
食感などの微妙な圧力のニュアンスは、歯の神経ではなく、歯根膜が受け取っています。
虫歯で歯の神経を取ったとしても、歯を抜かなければ、いままで通りに歯ごたえを感じることができるのです。
この歯根膜は、歯が抜けるときに一緒に取れてしまいます。
そのため、入れ歯やインプラントになると歯根膜がなくなり、もとのようには歯ごたえを感じることができなくなり、食事の楽しさも減ってしまいます。
歯根膜炎について
細菌が歯根膜に感染すると、歯根膜が炎症をおこします。
感染だけでなく、歯を強く打ったり、歯ぎしりによっても歯根膜炎をおこすことがあります。
急性の歯根膜炎になると、歯が浮いたような感じがしたり、噛んだときに強い痛みが出るようになります。
慢性の歯根膜炎は自覚症状は少ないのですが、歯根の骨を溶かしたり、全身にさまざまな症状を引き起こすことがあります。
「虫歯でもないのに噛むと痛む」という場合、歯根膜炎の可能性があります。
歯髄膜炎だった場合、どのような原因で炎症が起こったかによって治療方法も異なってきます。
歯が痛んだり違和感を感じたら、症状が消えて「まあいいや」と放置するのではなく、できるだけ早めに歯科を受診してください。
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