このブログではたびたび、「自分の歯をできるだけ長く残しましょう」ということをテーマに、さまざまな情報をお伝えしてきました。
今回は「ご自身の歯をできるだけ長く残すためには、特にこんな状態の歯に注意しましょう」という切り口で、失うリスクが高い歯についてお知らせします。
自分のお口の中で、特にどの部分に注意が必要かを知っておくことで、予防や早期発見・早期治療につながります。
ご一読のうえ、歯とお口の健康のためにお役立てください。
1.歯ぐきから出血している
健康な人の場合、歯ブラシでこすった程度では、歯ぐきから毎回出血するようなことはありません。
歯ブラシを軽く当てた程度で毎回出血する、または何もしなくても出血するといった症状がみられる場合、まず真っ先に考えられるのは歯周病です。
歯周病は、歯を失う最大の原因ですが、自分ではなかなか症状に気づきにくく、自覚症状が出る頃にはかなり重度まで進行していて、手遅れになってしまうことも珍しくありません。
歯ブラシでこすった程度で出血したり、何もしなくても出血がみられる場合は、歯周病がかなり進行している可能性もありますので、歯科医院を受診するようにしてください。
歯周ポケットについて
歯周ポケットというのは、歯と歯ぐきのすき間のことです。
この部分に歯周病菌が大量に繁殖することで、歯ぐきが炎症を起こし、やがて周囲の骨や組織を溶かしてしまいます。
このような状態になると、歯ぐきが歯を支えきれなくなり、次々と歯が抜けはじめます。
自覚症状が少ない歯周病では、この歯周ポケットの深さが病気の進行を示す目安になり、歯科検診ですぐに調べることができます。
歯ぐきに腫れがあっても、歯周ポケットが浅いうちは歯肉炎ですが、この深さが4〜5mmになると軽度歯周炎に分類されます。
軽度とはいえ、この段階でも歯を支える歯槽骨(しそうこつ)は歯根の1/3程度まで溶けています。
厚生労働省が発表した『平成28年 歯科疾患実態調査』によると、最近は10〜20代の方にも歯周病が広がっていることが分かっています。
歯周病の可能性がある人(歯ぐきに4mm以上の歯周ポケットがある人)の割合は、20代前半で25.7%、20代後半では31.4%で、年々増加傾向にあります。
「若いからまだ大丈夫」と思って歯ぐき腫れなどの違和感を放置すると、意外に速く進行することがあります。
また、歯周病菌が繁殖すると、口腔内だけでなく全身にさまざまな悪影響を及ぼすことが分かっています。
「この程度の歯ぐきの腫れで大げさでは?」などと考えずに、ぜひ早めに歯科を受診するようにしてください。
2.ブリッジの土台になる歯
ブリッジというのは、抜歯した歯を補うための治療法です。
抜けた歯の両隣にある健康な歯を利用して、橋をかけるようにかぶせ物をします。
ブリッジの土台になる両隣の歯は、かぶせ物をする際に削る必要があり、施術後は今までよりも大きな力がかかるため、健康な状態の歯と比較するとどうしても弱くなってしまいます。
また、ブリッジの中間部分は浮いているので、プラークが貯まりやすく、歯周病や虫歯のリスクも高くなります。
3.入れ歯を支える歯
部分入れ歯は、両隣に残っている歯にバネをかけて装着しますが、このバネをかけられる側の歯には常に物理的な力が働くため、歯の寿命が短くなってしまいます。
また、入れ歯は複雑な形状をしているため、金属バネと歯の細かいすき間などにプラークが貯まりやすくなります。
ブリッジや部分入れ歯のリスクについては、以下の記事もご覧ください。
4.かぶせ物がある歯(特に神経を取った歯)
かぶせ物がある歯というのは、過去に治療をしたことがある歯ですが、この部分に再び虫歯ができることがあります。
いったん治療した歯が再び虫歯になることは「二次カリエス」と呼ばれ、虫歯治療のなかでも大きな割合を占めている症例です。
特に、すでに神経を取っている歯はもろくなっているために注意が必要です
二次カリエスについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
5.未処置の虫歯
虫歯の場合も、痛みなどの自覚症状が出るまでは、自分ではなかなか気づきづらいものです。
特に、歯の裏側や奥歯、歯と歯のすき間にできた虫歯は、鏡で見たたででは発見しづらく、痛みが出るまで放置してしまいがちです。
20代前後の若い方が歯を失う原因は、物理的な要因(強い力でぶつけた等)を除けば、重度の虫歯を放置したケースが多くなります。
虫歯治療を行っても、完全に元通りというわけではないので、健康な歯と比較するとどうしても歯の寿命は短くなってしまいます。
できるだけ早期に虫歯を見つけて、歯のダメージが少ないうちに治療を行うことで、後々の保存状態がよくなります。
リスクの高い歯があるときは
まず一番に大切なのが、毎日行うセルフケアです。
歯ブラシを使ったブラッシングに加えて、歯間ブラシやデンタルフロスなどを使って、すき間の歯垢をできるだけ除去します。
仕上げに、殺菌効果のある薬用マウスウオッシュを使うのもお勧めです。
ご自身で行うセルフケアと併せて行いたいのが、歯科医院での定期検診です。
どんなにていねいにブラッシングしても、どうして磨き残しなどが出てしまい、磨き残したプラークが固まって歯石になると普通の歯ブラシで落とすことはできません。
このプラークを除去し、定期的に歯科医や歯科衛生士が口腔をチェックすることで、ご自身では気づきにくい初期の虫歯や歯肉炎などにも対応できます。
予防歯科に対する意識が高いスウェーデンでは、80歳になって自分の歯を20本残している人の割合が80%(日本では50%)と高い数字を示しています。
歯の不調がなくても定期的に歯科医院に通うことは、面倒に感じられるかも知れませんが、「自分の歯を一生使い続ける」という視点からみるととても有意義なことです。