これまで数回にわたり、歯周病とさまざまな全身疾患の関連性についてお伝えしてきました。
今回は、歯周病と心筋梗塞・脳梗塞の関係について見ていきたいと思います。
梗塞ってなに?
梗塞(こうそく)とは、「梗」が詰まる、「塞」がふさがるという意味で、心臓や脳の血管がふさがって血液が流れなくなってしまう状態を指します。
心筋梗塞は、心臓への血流が遮られることで心筋が酸素不足になり、壊死してしまう病気です。いったん発症すると40%の方が死に至るとされています。
脳梗塞は、脳の動脈が詰まることで血流が遮られ、脳が機能障害を起こす病気です。治療が遅れると脳へのダメージが広がり、日常生活に支障をきたすような後遺症が残ります。
心筋梗塞・脳梗塞とも、血管が詰まり血流が止まることによって発症します。
血管を詰まらせる主な要因は動脈硬化です。
歯周病と動脈硬化の関係
動脈硬化は、動脈の内側にコレステロールがたまって細くなったり、加齢などにより動脈の血管が硬くなることで、血液が流れにくくなる病態です。
血管内にプラーク(コレステロールや細胞壊死物、カルシウムなどのかたまり)が貯まって動脈が細くなると、そこに血栓(血液が凝固したかたまり)が形成されて血流を塞いだり、プラークが剥がれて別の場所を塞ぎ、脳梗塞を起こす恐れがあります。
動脈硬化は、脂質の高い食事や運動不足、喫煙、アルコール摂取などによって起きる生活習慣病の一種といえます。
しかしそれだけでなく、歯周病菌などの細菌感染によっても動脈硬化が促進されることが分かってきています。
口腔内で歯周病菌が増えると、血液を通じて体内に運ばれ、全身に炎症反応を引き起こします。
この時、動脈壁内で炎症物質や細胞壊死物質が増えることで、動脈硬化を促進します。
不健康な生活習慣と歯周病が重なることで、動脈硬化になるリスクはより高くなると言えます。
歯周病は早期発見・早期治療が大切です
歯周病はサイレント・ディジーズ(静かな病気)とも言われています。
「サイレント」という言葉は、症状が軽い、痛みを伴わない、または症状がないことを意味しています。
発症はしているが本人に自覚症状がないまま何年もかけて進行し、歯が抜け始めてからその深刻さに気づくということも稀ではありません。
歯が抜け始める頃には、もう歯を支える骨が溶けはじめてしまっているので、次々に歯を失う原因になります。
また、進行した歯周病は手術が必要になるなど、治療費も高額になります。
そのため、歯周病の対策には、早期発見・早期治療が最も大切です
歯肉の赤みや腫れ、歯ぐきからの出血などがある場合は、軽視しないように早めに歯科の検査を受けるようにしましょう。
歯周病を防ぐためには、口腔内を健康的な状態に保つことが重要です。
日常のケアとしては、歯をきれいにするだけでなく、歯と歯の間も清潔にし、歯肉に腫れがないかを確認することが重要です。
また、定期的な歯科検診も必要です。歯には見えない部分があるため、自己チェックでは見落としがあることもあります。
プラークを磨き残した場合は歯石に変わり、歯ブラシでは落とせなくなります。数か月に一度は歯科医院で歯石を除去することが必要です。
歯の定期検診は全身の健康にとって重要です
ここまで3回のシリーズで見てきたように、歯周病を放置すると、認知症や骨粗鬆症、心筋梗塞や脳梗塞など、全身の健康状態にさまざまな悪影響を及ぼします。
歯周病は細菌によって発生するため、状態が良くなったと思っても再発の可能性があります。
そのため定期的な歯科検診を習慣化することで、早期発見・早期治療ができるようになります。
また、歯科の検診では歯周病だけでなく口腔がんを発見する場合もあり、早期発見で簡単な治療を受けることで高い生存率が期待できます。
歯科の定期検診は、単に口腔内の健康だけに留まらず、全身の健康にとって重要なものであると言えます。