このブログでも何度か取り上げてきましたが、歯の健康に関する「8020運動」というものがあります。
この運動は「80歳になったときに自分の歯を20本残しましょう」という目的で、今から約30年前に始まりました。
開始当初は、80歳で自歯が20本残っている人は約15%程度しかいませんでしたが、最近はそれが約50%までに達しています。
運動の成果は目に見えて上がってきていますが、それでもまだ半数の方が目標に達していません。
若い世代の方は実感が湧かない
ところで、8020運動といっても、20〜30代の方は自分の歯を失う状況についてあまり実感が持てないことと思います。
それは、若い世代の方にとっての歯を失う原因が、主に虫歯が悪化したことなどによる抜歯だからです。
「普段からほとんど歯みがきをしない」という方は別にして、一般的には、このような虫歯はそう何本も続けて発生するものではありません。
実は、生涯を通してみると、自分の歯を失う最大の原因は、虫歯ではなく歯周病です。
歯周病は何年もかけて進行するものなので、若い世代の方にとってピンと来ないというのも、致し方ない話なのです。
この歯周病という病気の怖いところは、気付かないうちに何年もかけて進行し、気がついたときには症状が重くなっていることです。
そのため、本人があまり自覚しないうちに歯ぐきの状態が悪くなり、ある年齢になると続けて歯が抜けてしまうことがあるのです。
これを防ぐためには、20代〜30代の頃から正しい知識を持って歯のケアをしているかどうかが大切になります。
そこで今回は「自分の歯がなくなるとどうなるの?」ということについて、具体的に説明したいと思います。
成人歯の本数
成人の歯の本数は、親知らずを含めずに数えると、上下に各14本、合計で28本あります。
親知らずを含めると上下に各16本、合計32本ということになります。
親知らずは生えていない人もいるため、今回は「28本」を基準に考えます。
この28本という本数を基準にすると、8020運動というのは「80歳までに歯を失う本数を8本までに留めましょう」ということになります。
では具体的に、歯を8本失うと生活はどのように変わるのでしょうか?
まず、誰もが感じることとして、食事が自由に食べられなくなってきます。
歯がなくなると食べられなくなるもの
自分の歯がなくなると、それに応じて、自由に食べられるものが減っていきます。
何本くらい失うと何が食べられなくなるか、以下で具体的に説明します。
マイナス10本(自歯28本〜18本)まで
自分の歯が20本前後まで減ってしまうと、フランスパン、イカの刺身やスルメイカ、たくあん、堅焼きのおせんべいなどが食べられなくなってきます。
これらの食品は、若い人でも噛むのになかなか力がいるものですね。
硬いものは自由に食べられなくなりますが、それ以外はまだあまり支障がない範囲ともいえます。
この程度のマイナス本数が、8020運動が目指している活動目標にも重なります。
マイナス22本(自歯17本〜6本)まで
この位の本数の歯が抜けてしまうと、徐々に食べられるものが限られてきます。
具体的には、きんぴらごぼうや厚切りの豚肉、おこわ、かまぼこ、れんこん、せんべいといった固めの食べ物が食べられなくなります。
食材によって食べられるものと食べられないものが出てくるため、献立に気を遣うなど、生活する面でも不自由になってきます。
マイナス28本(5本〜0本)まで
ここまで自分の歯を失ってしまうと、バナナやうどん、ナスの煮付けなど、特別に柔らかいものしか食べられなくなります。
食事には、ただ栄養を接種するだけでなく、いろいろな食材・調理法の食品を食べることが生活の活力になるという側面もあります。
しかし、歯を失うことで流動食に近い食事しかとれなくなると、そういったメリットも失われてしまいます。
ここまで、自分の歯がなくなるに従って、どんな食品が食べられなくなるかを見てきました。
実際には、失った歯を入れ歯などで補うことで食べることができるようになりますが、痛みや違和感があったりすると、何でも自由に食べられるわけではありません。
自分の歯がなくなることで起こるマイナス面は「食べ物が自由に食べられなくなる」ということだけではありません。
次回は引き続き、歯を失うと生活がどのように変わるのかについて説明したいと思います。