先月の当ブログでもお伝えしましたが、新型コロナウイルスの流行以前から、歯科業界では「スタンダード・プリコーション」という感染症予防策が周知・徹底されていました。
歯科治療を行う際は、患者さんの唾液や血液を通して、どうしても「未知の感染症」に罹患するリスクが高くなります。
また、今回の新型コロナウイルスもそうですが、感染症のなかには「本人に自覚症状は出ていなくても他人に感染させてしまう」場合があります。
そのため、以前から歯科医院では「誰がどんな病気に感染しているか分からない」という前提のもと、すべての治療行為や院内設備、使用した器具などに対して「未知の感染症に対する予防対策」を講じてきていました。
これが「スタンダード・プリコーション」で、これをしっかりと遵守することで、患者さんと施術者両方の安全を保ちながら治療を行うことができるのです。
今回の新型コロナウイルス感染症が流行しはじめた当初、一部の週刊誌やWebサイトなどで「歯科医院は感染リスクが高い」と噂されました。
これは、もともとは米国で投資家向けにコンテンツを配信する Visual Capitalist という会社が発信した「新型コロナ感染リスクが高い職業トップ30」という記事が引用元になっていたようですが、実際には、これまで歯科治療を通じて患者さんに感染した事例はひとつもありません。
これは、もともと歯科業界で「スタンダード・プリコーション」が周知・徹底されていたためです。
当院の具体的な感染症対策
先月の当ブログで次亜塩素酸水による消毒をご紹介しましたが、この記事を掲載したあと、世間では「次亜塩素酸水には効果がない」という意見や「いや、一定以上の効果がある」という反論が出されています。
そのため今回は、安心してご来院いただけるよう、当院のその他の感染症対策についてご紹介します。
手指の消毒
ご存じの通り、感染症対策の第一は「手洗い」もしくは「手指の消毒」になります。なかでも手洗いが一番有効ですが、十分な殺菌効果を得るためには、30秒以上かけて手指の間や爪の先までしっかりと洗う必要があります。
当院でももちろん、医療スタッフはしっかりと手洗いを行っていますが、ご来院される患者さん方はこの手洗いができません。
そのため、当院では医療用医薬品である「ウエルパス手指消毒液0.2」を受付に用意し、来院された方の手指の消毒を行っていただいております。
この「ウエルパス手指消毒液0.2」は、塩化ベンザルコニウムを 0.2w/v% 配合したアルコール性ローションタイプの手指消毒剤で、場所を選ばず手軽に使用できるのが特長です。
そのため当院のスタッフも、サッと消毒したいときにはこの薬品を活用して、こまめに消毒しています。

院内の消毒
院内の消毒としては、患者さんが治療されたあとに毎回、使用したユニットを院内感染用殺菌消毒液「エタノール88」で拭き取っています。
エタノールは食品添加物としても使われているほど安全性が高く、かつ殺菌用アルコールの中でも除菌効果が高いため、毎回の消毒に適しています。

診療後のユニット周りや器具の殺菌には「ピューラックス」を使用しています。
これは次亜塩素酸ナトリウムによる消毒液で、エタノールより強い消毒効果が見込めます。
一定の濃度以上に薄めたものはプールや浴槽の消毒に使われるくらいの安全性がありますが、原液が直接人体に触れるのは危険なため、ピューラックスは診療時間後の殺菌用、エタノール88 は毎回の治療後の殺菌用として使い分けています。

器具の消毒
歯科の治療に使う器具は、直接患者さんのお口の中に触れるため、一度使用されたものはウイルスや細菌を完全に死滅させる「滅菌処理」を行います。
当医院では、使用済みの器具を自動洗浄機で洗浄したあと、オートクレーブという装置を使って滅菌処理しています。
このオートクレーブというのは高圧蒸気滅菌器のことで、身近なもので例えると、圧力鍋が大きくなったようなイメージです。
内部を120度前後の高温・高圧に保ちながら飽和蒸気(これ以上蒸気が出ない状態)で満たすことで、短時間で器具の隅々までしっかりと滅菌処理することができます。

最近では、東京都の自粛解除基準がステップ3に移行するなどコロナ禍の影響も徐々に弱まってきているようですが、一方で毎日新たな感染者も報告されており、まだ気を抜くわけにはいきません。
かたや、歯の治療を「まあいいや」と放っておいてしまうと、本人も気付かないうちにむし歯や歯周病が進行して、思わぬ症状を引き起こすことがあります。
気になる症状がある方は、少し外出しやすくなってきたこの時期を利用して歯科の診療を受けておくと安心です。