抜歯をしたあと、個人差はありますが、しばらくの間はどうしても痛みが続きます。
この痛みは、手術後の麻酔が切れた頃がピークとなります。
その後、痛みは徐々に引いていき、1〜2日経つと痛み止めが不要になるくらいまで弱くなります。
鈍痛はしばらく残りますが、通常は1週間から10日くらい、長くても2週間程度で自然に治まります。
そのため、抜歯後の痛みへの対処法は、麻酔が切れる頃の痛みのピークを上手に抑えることがポイントになります。

麻酔が切れるまでの時間は、個人差がとても大きいのですが、一般的に麻酔の効果はおおむね2〜3時間ほど持続します。
麻酔が効きやすい体質の方や、深部に麻酔をしたような場合は、効き目が消えるまでに4〜6時間ほどかかる場合もあります。
どれくらいの時間で麻酔が切れるか分からないので、痛み止めを処方されたら、1回目は痛みが現れる前に早めに飲んでおくことをお勧めします。
痛み止めが効き始めるまで約30分ほどかかるため、強い痛みが出てから服用しても痛みを抑えきれないことがあります。
痛みが出る前に痛み止めを飲んでおくことで、ほとんど痛みを感じないか、痛んでも我慢できる範囲に抑えることができます。
以上は一般的な手術後の経過ですが、人によっては「抜歯してから2〜3日後にズキズキとした激しい痛みが現れる」ことがあります。
痛みのピークが数日後に現れるこのようなケースでは、抜歯した部分が『ドライソケット』という状態になっている可能性があります。
ドライソケットとは
抜歯すると、歯があった部分にぽっかりと穴が空き、奥の骨が露出します。
通常であれば、この穴にたまった血液が「血餅(けっぺい)」というゲル状の塊になり、自然に穴を塞いでしまいます。
血餅というのは、血小板がもつ血液凝固作用によって血が餅状に固まったもので、自然に備わっている止血の仕組みです。
この血餅が体外にできると、乾燥して固まって「かさぶた」になります。
口内はそれほど乾燥しないので、抜歯後にできた血餅は柔らかいままです。
この血餅(かさぶた)によってカバーされることで傷口が保護され自然治癒しますが、体質や体調によりうまく血餅ができなかったり、いったん形成された血餅が剥がれてしまうと、骨がむきだしになって痛みが現れます。
それがドライソケットと呼ばれる状態です。
ドライソケットの発生率は、調査によりばらつきが大きいのですが、抜歯全体の2〜4%となっています。

ドライソケットになるとどうなる?
ドライソケットになると、強い痛みが1〜2週間ほど続きます。
その後1〜2週間かけて徐々に痛みが引いていき、完全に痛みが治まるまでには通常1ヵ月くらいかかります。
強すぎるうがいや接触癖、飲酒や喫煙などが続くと、痛みが数ヶ月続く場合もあります。
ドライソケットを起こす原因
うがいや歯ブラシ
抜歯後の出血が気になって強めにうがいをしたり、歯ブラシで強めにブラッシングをすると、その物理的な力で血餅が剥がれてしまいます。
抜歯をしたら、血餅がしっかり形成されるまで、2〜3日間は特に患部に注意をしましょう。
抜歯した部分が気になって、舌で何度も触るようなこともよくありません。
飲酒や喫煙
アルコールには血管を広げる作用があるため、出血しやすくなり、傷口が開いてうまく血餅が形成されないことがあります。
血流がよくなることで歯ぐきが腫れ、痛みが強くなることもあります。
ニコチンは毛細血管を収縮させて血流を悪くするため、血餅ができにくくなります。
傷の治癒に必要な酸素や栄養は血液によって運ばれますが、血管が収縮すると十分に行き渡らないので、傷の治りも悪くなります。
また、ニコチンの作用でだ液の分泌量も減るため、免疫力が下がり、細菌に感染しやすくなります。
抜歯をしたら、血餅がしっかり形成されるように、少なくとも2〜3日は飲酒や喫煙を控えるようにしてください。
ドライソケットの予防
・抜歯後に血の味がしても、強いうがいは控える。しばらくは優しく口をゆすぐ程度で。
・歯ブラシは優しく。抜歯した隣の歯を磨くときにも気を付けてください。
・当日の入浴や運動は控える。血流が良くなると痛みも出やすくなります。
・飲酒・喫煙はしばらく我慢しましょう。
・抜歯した部分をむやみに触らない。血餅が取れて、細菌にも感染しやすくなります。
ドライソケットになったら
ドライソケットになると強い痛みが出るので、無理をせずに痛み止めを飲みましょう。
口内を清潔に保つのが基本ですが、患部に無理な刺激を加えないようにします。
痛いからと言って患部を冷やしすぎると、血行が悪くなって逆効果になることがあります。
そして、できるだけ早めに歯科医を受診するようにしてください。
歯科医では、基本的に抗生物質や鎮痛剤を使って治療します。
状態にもよりますが、だいたい1〜2週間程度で痛みを感じなくなる方が多いです。
いったんドライソケットになるとしばらくは強い痛みが続きますが、できるだけ痛みを少なくして、少しでも早く完治するように、早めに歯科医にご相談ください。