知覚過敏というのは、冷たいものや甘いものを飲食したり、歯ブラシの毛先が触れたりなどした際に、歯がしみたり、一時的な痛みを感じる症状です。
むし歯でも痛みを感じますが、明らかな病変がないのに歯がしみたり痛みを感じる症状を、知覚過敏として区別しています。
今回は、知覚過敏になる理由や予防法、むし歯との見分け方などをご説明します。
歯を保護しているエナメル質
歯の構造を大まかに説明すると、外側からエナメル質・象牙質・歯髄(神経)の三層構造になっています。

このうち一番外側にあるエナメル質は、人間の体のなかで最も硬い組織であり、歯の表面をしっかりと保護しています。
エナメル質の主成分はハイドロキシアパタイトというリン酸カルシウムの一種で、その厚みには個人差がありますが、おおむね2〜3mm程度です。
このエナメル質がバリアの役割を果たすことで、飲食物の刺激や物理的な力から歯を保護しているのです。
硬くて丈夫なエナメル質ですが、酸に弱く、瞬間的に大きな力がかかると割れてしまうといった弱点もあります。
象牙質が露出すると痛みを感じる
歯を保護しているエナメル質が何らかの理由で弱くなったり壊れてしまうと、内側にある象牙質に直接、さまざまな刺激が伝わります。
象牙質はエナメル質よりも柔らかく、表面に細かい穴(象牙細管)が空いているため、食品に含まれる糖分や酸、急な温度変化などに触れると、その刺激が神経まで伝わって痛みを感じます。
これが、知覚過敏によって痛みが発生する仕組みです。

象牙質が露出する原因としては、歯ブラシを強く当てすぎてエナメル質が削れたり、飲食物に含まれる酸によってエナメル質が融けるなど、さまざまです。
歯の根元の部分はエナメル質に覆われていないため、加齢によって歯ぐきが下がってくると、根元の象牙質が露出して痛みを感じやすくなります。
就寝中に無意識で歯ぎしりをする方の場合は、噛みしめる力によって歯が割れてしまい、知覚過敏の原因になることもあります。
知覚過敏の見分け方
進行したむし歯は慢性的に痛みますが、知覚過敏による痛みの場合は、甘いものや酸っぱいもの、熱いものや冷たいものに歯が触れたとき、一時的に痛むのが特徴です。
患部を軽く叩くと、むし歯は響くように痛みますが、知覚過敏は痛みを感じません。
知覚過敏がある方は、歯の根が下がっており、正面から見て歯が長く見えることが多いという特徴もあります。
ただし、初期の虫歯の場合は慢性的な強い痛みを感じることが少ないため、知覚過敏との区別が付きにくいです。
歯と歯の間にできたむし歯や、治療した詰め物・かぶせ物の内側で再発したむし歯(二次カリエス)など、ご自身で見てもほとんど分からないため、知覚過敏だと思って放置せず、歯科医院での早めのチェックが必要です。
知覚過敏のチェック項目
- 冷たいものや熱いものが染みる
- 歯ブラシの毛先が当たると染みる
- 甘い物や酸っぱいものが染みる
- 歯肉が下がって歯の根が露出している
- 染みる痛みは10秒程度で治まる
- 歯ぎしりがある
知覚過敏の予防と治療
軽度の知覚過敏の場合、知覚過敏ケアの歯磨き粉を使用することで、症状が軽くなることがあります。
知覚過敏ケア用の歯みがき粉にもさまざまな種類があるので、刺激の伝達を抑制する硝酸カリウムや、象牙細管をカバーして刺激を伝わりにくくする乳酸アルミニウムなどの有効成分が含まれているものを選ぶとよいでしょう。
歯ブラシの毛先が触れると痛みを感じる方には、繊細な毛先で刺激が伝わりにくい、知覚過敏ケア用歯ブラシというものもあります。
また、エナメル質は酸に触れると溶けてしまいますが、再石灰化といって、だ液に含まれる成分が溶けたエナメル質を補う働きもあります。
できるだけ間食せず、だ液を十分に働かせることによって、口内環境が改善し知覚過敏の予防にもなります。
以上はご自身で行える軽度の知覚過敏ケアですが、知覚過敏の原因はさまざまなので、強い症状が出ていたり、症状が長引く場合は、歯科医院での診察をお勧めします。
歯科医院では、それぞれの方の状態にあわせて、酸から歯を守る薬でコーティングしたり、歯ぎしりが原因の方には就寝時のマウスピースを作るなどの専門的な治療を行います。