人は、歳を取るにしたがって徐々に自分の歯を失ってしまいます。
自分の歯を失うことで、食べたいものが自由に食べられなくなったり、健康寿命(介護の必要がなく、自立した生活を送れる年数)が短くなってしまうなど、毎日を健康に過ごす上で好ましくない影響が現れてきます。
そのため、できるだけ若いうちから「歳を取ってもなるべく多く自分の歯を残そう」という考えをもって、デンタルケアについての理解を深めておくことがとても大切です。
今回は、自分の歯を失うことについて、実際のデータを見ながらご説明したいと思います。
(参考データは2018年11月 公益財団法人8020推進財団調べ)
歯を失う原因TOP3

歯を失う二大原因は「歯周病」と「虫歯」です。そこに「破折」が続き、歯を失う原因 TOP3になります。
若い方にとって、自分の歯を失う原因は「虫歯が進行し過ぎてしまい仕方なく抜歯する」というイメージが強いかも知れません。しかし、2018年に行われた調査によると、実際に歯を失っている方の原因の第一位は「歯周病」で、全体の4割弱もの比率を占めています。
つぎに多いのが「う蝕」で、全体の29.2%になります。
この「う蝕」というのは、医学用語で「口腔内の細菌が糖質から作った酸により、歯質が脱灰されて起こる歯の実質欠損」という症状のことです。う蝕された歯を「う歯」と言い、一般的には「虫歯」と呼ばれています。
歯周病と虫歯の割合を比較すると、歯周病で歯を失う人は、虫歯で失う人に比べて約1.3倍も多くなっています。
次に多い原因が「破折」の17.8%です。破折というのは、転倒や事故、ケンカなどで外部から物理的な力が加わり、歯が折れたり欠けたりすることです。
どんな歯が抜けているか

抜歯前の歯がどのような状態だったかを調べたデータによると、一番多いのは「冠」で37%となっています。この冠というのは、歯科治療でおこなうクラウン・かぶせもののことです。
次に多いのが「う蝕」(虫歯)の34.1%で、それから「健全な歯」18.6%、「充填」(詰めものをした歯)8.5%と続きます。
ここで注目したいのは、冠(クラウン・かぶせもの)で治療した歯が、治療せず放置している虫歯より、やや比率が高くなっているという点です。
クラウンによる治療は奥歯に対して行うことが多いのですが、歯を失う順番も、奥歯から先に抜けていき、前歯が残ることが多いのです。
奥歯は、歯みがき時の磨き残しが多く、目視によるセルフチェックもしにくいので、虫歯や歯周病になりやすい部位です。
そして、歯周病が進行してしまうと、治療を行った歯もそうでない歯も関係なく抜けてしまいます。
このデータからは、普段から奥歯にも気をつけてケアしなければいけないことが読み取れます。
また、以前の記事でもご紹介しましたが、いったん治療した歯でも二次カリエスを発症する可能性があるため、完治したからといって気を抜かず、定期検診を欠かさずに行うことも大切になります。
歯を失う年齢

歯を失う年齢については、2005年の調査では50代後半〜60代前半がピークでしたが、今回の調査では60代後半〜70代前半がピークになっています。
つまり、社会全体で見れば、この十数年間でそれだけ長く自分の歯を維持できるようになってきたということで、デンタルケアへの意識の高まりと一定の成果を感じます。
また、このグラフをみても分かるとおり、自分の歯を失う症状は、ある年代をピークに一気に現れます。
これは、歯を失う原因の第一位が歯周病ということを示しています。
歯周病は、自分でも気付かないうちに何十年もかけて進行し、歯がグラグラしてきたなぁ…と本人が気付いた頃にはかなり症状が進んでおり、やがて歯ぐきが歯を保持できなくなって次々に抜けてしまう病気です。
この記事をご覧になられている方も、大切なご自身の歯をできるだけ長く1本でも多く残せるように、日頃のセルフケアと歯科医による定期検診を欠かさないようにしてください。