昨年、九州大学の武州准教授らの研究チームによって、歯周病菌がアルツハイマー型認知症を引き起こすメカニズムが解明されました。
このブログではこれまで歯周病が全身の健康に及ぼす悪影響についてたびたび取り上げてきましたが、今回は歯周病と認知症の関係を中心にお伝えします。
アルツハイマー型認知症とは
アルツハイマー型認知症は、認知症全体の67.6%を占めてます(令和元年6月 厚生労働省老健局資料)。
物忘れなどの記憶障害から始まり、時間や場所・人物をうまく認識できなくなる見当識障害、計画を立てて行動することが困難になる実行機能障害、着替えや道具の使い方が分からなくなる失行、言語能力や計算能力の低下などの症状がみられます。
また、二次的な症状として、うつ・無気力・妄想・暴言などが現れる場合もあります。
患者の大半は65歳以上ですが、ごくまれに10代からでも発症することがあります。
アルツハイマー型認知症には今のところ有効な治療法はありませんが、早期に発見することで進行を遅らせたり、症状を軽くできるとされています。
今回の九州大学の研究では、歯周病患者の歯ぐきからアルツハイマー型認知症を引き起こす「アミロイドβ」というたんぱく質が生じ、その後血管を通って脳内に蓄積されることで、記憶障害などを引き起こす可能性があることが分かってきました。
上に貼付したYouTube動画でも、認知症の予防のために「正しい歯みがきと、定期的に歯医者で点検して歯石を取る」ことが推奨されています。
歯周病と歯石の関係
歯周病の予防法としては、基本的なことですが、歯垢(プラーク)や歯石を除去して口内を清潔に保つことで、歯周病菌をはじめとする細菌を減らすことが挙げられます。
このうち、歯垢は毎日の歯みがきで落とすことができますが、歯石は歯みがきで落とすことはできません。
歯石は、歯みがき時にみがき残した歯垢(プラーク)が唾液の成分と混じり、石灰化したものです。
プラークの正体は虫歯や歯周病の原因となる細菌や微生物の塊で、放置すると約2日間で石灰化が始まり、その後2週間くらいかけて歯石化が完了します。
いったん歯石化すると内部の細菌は死滅しますが、歯石の表面はざらざらしており、その表面にさらに歯垢や歯石が溜まりやすくなるため、虫歯や歯周病になるリスクが高まるのです。
いったん歯石になってしまうと、歯みがきでは除去できなくなるため、歯科医院で除去する必要があります。
歯周病に備えましょう
今回の研究で、歯周病とアルツハイマー型認知症の関連性が具体的に分かってきました。
さらに、歯周病は全身の健康状態にさまざまな悪影響を及ぼすことが知られています。
まず、歯周病は歯を失う一番の原因になります。
自覚症状がないまま何年もかけて周囲の骨を溶かしながら進行し、気づいたときには手遅れになることもあります。
また、歯周病菌は心臓病や脳卒中、誤嚥性肺炎、糖尿病などとも関係していることが分かっています。
これは、歯周病で腫れた歯肉部分から内毒素(細胞壁内に含まれる毒物で細胞が死滅しても残る)などが血管内に侵入し、全身に運ばれるためです。
定期的な検診と歯垢除去を
このように、さまざまな悪影響がある歯周病ですが、進行してしまった歯周病に対する治療法は確立されていないため、予防と早期発見が重要です。
歯周病予防にはプラークや歯石の除去が肝心ですが、磨き残したプラークは約⒉週間で歯石化するため、理想的には3ヵ月に1回程度、少なくとも年に1〜2回程度の定期検診をしておくと安心です。
定期的に検診をすることで、歯周病は自分では気づきにくい歯周病も早期に発見・治療することができます。
参考資料
歯周病菌感染は全身の脳老人斑成分を脳内輸入させる(2020.07.03)
世界初ヒト歯周病の歯茎で脳内老人斑成分が産生されていることが判明
〜歯周病によるアルツハイマー型認知症への関与解明の新展開〜(2019.11.14)