今回は、くちびると頬(ほっぺ)の役割についてお話したいと思います。
ヒトがものを食べるとき、歯だけあればよいかというと、決してそんなことはありません。
特に水分を多く含むものを食べる場合、くちびるや頬には、水分がこぼれないようにする役割があるのです。
ほ乳類の多く(ヒト、イヌ、ネコなど)にはくちびるとほっぺがあるため奥歯が見えません。それに対して、爬虫類の多く(ワニ、トカゲなど)は奥歯が見えています。これは、ほ乳類は生後ミルクを飲む際にくちびるや頬の筋肉が必要であり、爬虫類はミルクを飲まないのでそれらの必要がないためだと考えられています。
くちびると頬の筋肉はつながっており、連動して動くようになっています。
ものを食べるとき、ヒトはそれらの筋肉を無意識のうちに使用しています。
食べ物を奥歯で何回もかみながら、内側からは舌で、外側からは頬の筋肉を動かすことで、食物が歯の内側にも外側にも落ちないように上手にコントロールして細かくかみ砕き、飲み込みます。
もし舌やほっぺの運動神経が正常に働かなくなると、食べ物はすぐに舌(内側)や頬(外側)に落ちてしまい、かみ砕くことができず、飲み込むことも難しくなってしまいます。
歯がなければ当然ものは食べられませんが、食べるためにはくちびるや頬の役割もとても大切だということが分かっていただけたかと思います。